補助事業番号 2017M-101
補助事業名 平成29年度 次世代高画素撮像素子対応広角中心窩レンズの開発 補助事業
補助事業者名 芝浦工業大学・清水創太
1 研究の概要
広角中心窩レンズは,視野内で拡大率を急激に変化させ,人間や猛禽類の眼のように「広い視野」と「高倍率」と
いう相反する性質を同時に実現する光学系である.従来,レンズには高倍率をもつが視野の狭い望遠レンズ,あるいは広い視野をもつが倍率の
低い広角レンズのいずれかしか存在しなかった.観測対象が遠方にあって激しく動き回る場合に,望遠レンズは視野の狭さゆえにしばしば対象
を見失い,広角レンズは倍率が不十分で詳細な観測が出来ないという問題が生じることが容易に想像できる.広角中心窩レンズはこのような問
題を解決するために考案され,捉え逃しなく視野中心部分の高倍率の領域で詳細な観測を行うことが出来る.本研究では数百万画素をもつ次世
代高画素撮像素子に対応した上記の特徴をもつ特殊な広角光学系を設計し,試作を行った.
2 研究の目的と背景
数百万画素から一千万画素を超える撮像素子の高画
素化の時代にあって,現在までに開発された広角中心窩レンズの光学性能はそれに耐える十分なものとは言えない状態にある.このように,次
世代の超高画素撮像素子に対しても十分な光学性能を発揮する広角中心窩レンズの開発が強く望まれている.本研究では,複数枚の非球面レン
ズを用いることで,十分な空間解像力をもちかつ色収差が抑制された鮮鋭な画像を撮像できる次世代型広角中心窩レンズを設計・試作すること
を目的とした.
3 研究内容
(1)次世代高画素撮像素子対応広角中心窩レンズの開発
(www.intelligent-robotics.jp/2017M_research-jka_HD_fovea_lens.html)
以下に実施した内容を示す
1.
試作光学系の目標仕様を決定した
2.
目標仕様に基づき光学設計をスタートし6月末までに完了した.
3.
機構設計を7月下旬に完了した.
4.
9月下旬に試作機を完成させた.
5.
各種フィールドテストやMTF測定による光学性能評価
を行った.
6.
研究成果発表用パンフレットを100部作製した.
図2 レンズ試作機により得られた高画素高解像度画像
4 本研究が実社会にどう活かされるかー展望
我が国において,少子高齢化社会の到来による労
働力不足,介護者不足は近い未来に解決必死の深刻な問題としてクローズアップされ,当該分野におけるロボティクス技術の積極的な導入が見
込まれている.本研究の成果はその中でも知能化により自律行動を行う介護ロボット等の視覚センサとして大いに貢献するものと考えられる.
また,隣国中国でも一人っ子政策の余波を受けて,日本以上の介護者不足が予測されており,上記ロボティクス技術を必要とする巨大な市場が
我が国のすぐ隣に存在する.そのため,本研究の成果により当該分野の産業振興が加速的に進むものと考えられる.
5 教歴・研究歴の流れにおける今回研究の位置づ け
研究代表者は25年間に渡って広角中心窩レンズの開
発に取り組んで来たが,これらは地上波アナログ時代 のVGA(640x480)
カメラに対応する光学性能しか持たないものであった.今回開発した広角中心窩レンズは撮像素子の高画素化にともなう地デジ&Blu-RAY画質であるFHD(1920×1080)を超える高画素撮像素子にも利用できる高い光学性能を有する.これにより,大学
研究室における教育研究活動において新たなレンズ試作やロボティクス応用に対して非常に参考になる試作とデータの取得が実現できたと考え
ている.
6 本研究にかかわる知財・発表論文等
広角中心窩レンズに関する特許出願を行った.
7 補助事業に係る成果物
(1)補助事業により作成したもの
次世代高画素対応広角中心窩レンズ試作機
(www.intelligent-robotics.jp/2017M_research-jka_HD_fovea_lens.html)
(2)(1)以外で当事業において作成したもの
成果報告用パンフレット・100部
8 事業内容についての問い合わせ先
所属機関名: 芝浦工業大学デザイン工学部(シバウラコウ
ギョウダイガクデザインコウガクブ)
住 所: 〒108-8548
東京都港区芝浦3-9-14
担 当 者: 教授・清水創太 (シミズソウタ)
担当部署:デザイン工学科(デザインコウガッカ)
E-mail: shimizu@shibaura-it.ac.jp
URL : www.intelligent-robotics.jp